中部電力がコメの栽培に取り組み始めた。田に水を張らない珍しい育て方で、今年まず360キロの収穫を見込む。一見エネルギーとは関係のない新規事業になぜ乗り出したのか。
愛知県東部、新城市の山あい。中部電が管理する「乾田」では6月、地元産米「アイチノカオリ」の稲が育っていた。
苗ではなく種もみを3月に直接まいた。育苗や田起こし、代かきといった作業のいらない「乾田直播(じかま)き」と呼ばれる手法で、水稲全体に占める割合は少ないものの、国内の栽培面積は2万ヘクタールほど普及が進んでいる。中部電の担当者は、一般な水田に比べ、「生産コストを3、4割削減できます」とアピールする。
苗の成長後も水を張らず、雨水に頼る。ビール酵母などが由来で土の中の養分を稲の根に伝えやすくする農業用資材「バイオスティミュラント」で生育を促し、課題とされる収量の少なさをカバーする。散布にドローンを使って省力化し、全体の労働時間を従来の栽培方法から約6割短くできるという。
水を張った水田では、土の中…